雑食エンジニアの気まぐれレシピ

日ごろ身に着けた技術や見知った知識などの備忘録的なまとめ.主にRaspberry Piやマイコンを使った電子工作について綴っていく予定.機械学習についても書けるといいな.

Flsun prusa i3にUltrabaseを導入する[テストプリント編]

以前のエントリ shikky-lab.hatenablog.com から大分間が開いてしまいましたが,発注していたUltrabaseが届いたのでセッティングとテストプリントを行いました.

前回の記事をサクッとまとめると下記です.

  • Ultrabaseはanycubic社が開発したガラス系のプラットフォームプレート
  • ガラスなのでゼロ点検出に静電容量式のスイッチを使う必要がある
  • 取り付け用にマウンタ作りました
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    静電容量センサとマウンタ

で,今回はこれをセットしてみた回になります.完成図はこんな感じ.

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Before & After

センサがでかくて目立つ...

Ultrabaseのセット

Ultrabaseはこんなのです.

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Ultrabase(単品)
見ての通りただの板です.購入元はコチラ.
220 × 220 12V heatbed ウルトラベース 3D プリンタプラットフォーム構築表面ガラス板 anycubic i3 メガ MK2 MK3 3d プリンタ温床部品|3Dプリンタパーツ & アクセサリ| - AliExpress
ヒートベッド付きのオプションもあるのですが,今回は板単体を買いました.

で,これをクリップを使って固定しています.

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4隅をクリップで固定

Flsun i3のビルドプレートはアルミ製で,高さ調節用のねじが4隅についているのですが,備え付けの状態ではねじ頭が板の上に出っ張ってしまっています.幸いねじ穴部分には凹みがつけられているので,普通の鍋ねじに換装するだけで出っ張りをなくす事ができます(低頭ねじ不要).これにより,Ultrabase全体をアルミプレートに密着させることができます.

なお,Ultrabaseには裏面全体に両面テープがつけられていましたが,今回それは使用していません(最悪もとに戻すケースを考慮して) .
クリップ固定のみで済むのであれば,Ultrabaseを取り外して洗浄することや,傷がついた際に交換することもできるので,しばらくはこの運用を続けたいと思います.

ゼロ点調整

板とセンサが取り付けられたので,さっそく調整をしていきます.
ゼロ点調整の方法は以前の誘導スイッチの際と同じです.以下,過去記事から引用.

  1. M851コマンドを使って,オフセットを適当に大きな値に設定する(e.g. -5mmとか)
    • 仮の値です.設定次第では0点以下にZ軸を下げられないことがあるため,0点が上の方に来るようにします.
  2. G28コマンド(Auto Home)でホーム位置を検出する.
    • Auto Homeでは近接スイッチが反応するまでZ軸が下がります.そして,この点を上記で設定したオフセット値として認識します.
  3. Z軸を少しずつ下げて0点調整をする.
    • コピー用紙などを下に挟んで,それがわずかに動かなくなるくらいが0点です.
  4. 1と3の数値の差をOFFSETとして指定する
    • これで,ノズル先端とセンサの検知位置との差を求めることができました.

shikky-lab.hatenablog.com より

センサは検知範囲内にあれば細かい位置はどうでもよく,現在の検出位置のノズルの先端との差をオフセットとして指定すれば調整完了です.
なお,この調整はノズル・プレート共に印刷時と同様に加熱した状態でやった方がいいです.
常温状態で調整すると,熱による膨らみの影響で,運用中にノズルが近づきすぎてしまいます.

テストプリントと所感

セッティングが終わったので早速印刷してみました.以下所感.

  • 造形後の剥がしやすさは圧巻の一言.パキっと剥がれてくれる.
  • ABSは若干反りがち.定着力でいうとM3のプラットフォームシートの方に軍配.
    • とはいえ,あっちは剥がすのにめちゃくちゃ苦労することも多いが
  • ベッドの表面が温まるまでに時間がかかり,センサの温度と一致しない
    • センサが100℃に達した時点で,表面は90℃程度だったり.
    • ひとまず110℃まで加熱することで,ABSのプリントもある程度成功するようになった
    • 裏面の両面テープ全部剥がしてしまったほうがいいのかもしれない
  • 静電容量センサの誤差は誘導式より若干大きめ?
    • ちゃんと統計はとってないが,誘導スイッチが±0.01mm程度のところ,静電スイッチは±0.02mm程度な気がする.
    • とはいえ,その程度なら誤差(それ以外の影響の方が大きい)な気がする.
    • あと,プロービング速度を落としたら,±0.01mm程度まで収まった.
  • X軸の端々での印刷物の厚み差をとると,0.1mm程度
    • AutoLeveling後の結果なので,純粋な板の傾きというわけではない
    • Ultrabase導入前に測定していなかったことが悔やまれる,が,あんま変わってない気がする

というわけで,感想としてはまずまずといったところでしょうか.確かに剥がしやすいので運用は楽そうですが,ABSをメインでつかう私としてはまだ不安要素が多いですね.
色々と調整を繰り返して成功率は上がってきましたが,まだ以前のほうが成功率が高かったので,もう少し手をかける必要がありそうです.
クリティカルな設定など見つけたら,また記事にしたいと思います.
それでは.

余談:フィラメント乾燥はいいぞ

実は今回Ultrabase導入と併せて,フィラメント乾燥機を購入しました.

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これを

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こうして

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こうじゃ

この方法はNature3D様が下記で紹介していたものとなります.大変助かりました.ありがとうございました.
nature3d.net

使い古していたABSをこの乾燥機で60℃(といいつつ,実際には50℃程度にしか上がっていなかったようですが)で8時間ほど乾燥させてみたところ,驚くほど糸引きがなくなりました.
(写真撮っておけばよかったッ!!)
手間もそんなにかからず効果絶大なので,お試しいただければと思います.
フィラメント乾燥はいいぞ