雑食エンジニアの気まぐれレシピ

日ごろ身に着けた技術や見知った知識などの備忘録的なまとめ.主にRaspberry Piやマイコンを使った電子工作について綴っていく予定.機械学習についても書けるといいな.

Flsun prusa i3に施した改造まとめ

3Dプリンタ改造がひと段落したので,ここらで一旦改造した内容をまとめたいと思います.

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改造箇所まとめ

Before-Afterを表にするとこんな感じです.

項目 Berfore After
ホットエンド E3Dv5 Mosquito
ノズル E3Dv5クローン テクダイヤノズル
レイヤ冷却ファン なし 5015ファン
近接スイッチ SN-04N(電磁誘導式) LJC18A3-H-Z(静電容量式)
ビルドプレート アルミ板 Ultrabase(ガラス)
モータドライバ A4988 TMC2208

また,ベンチマークの一つであるFDMTestの結果はこんな感じでした.

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FDMTest結果(After)

項目 内容 スコア(Berfore) スコア(After)
Dimensional Accuracy 段状の円柱のXY精度 3 4
Fine Flow Control 上部の尖角部分 5 2.5
Fine Negative Features 円柱が何本抜けるか 3 5
Overhangs どの角度まで綺麗に出せるか 1 4
Bridging ブリッジ性能 0 5
XY Resonance XY方向の共振 2.5 2.5
Z-axis alignment 積層痕 0 2.5
Total 総合結果 14.5 25.5

なおFDMTestについておよび,過去のテスト結果については過去記事にて.
3Dプリンタ(Flsun prusa i3)の性能を評価してみる - 雑食エンジニアの気まぐれレシピ

ホットエンド

Flsun i3にはデフォルトでE3Dv5ホットエンドが搭載されていましたが,E3Dv6を経て,今はmosquito ホットエンドを搭載しています.
The Mosquito® Hotend – Slice Engineering
ヒートブロックとヒートシンクを細いパイプで連結して熱の伝導を極力防ぐという変わった見た目をしているホットエンドです.これのおかげでヒートシンクがかなり小さく抑えられているのだとか.またヒートブロック部分が4本の支柱で固定されているため,ノズル交換が楽という利点があります(交換時にブロックを別途押さえなくてよい).

なお交換の効果ですが,正直E3Dv6->mosquitoに変えても品質への影響はあんまり感じませんでした.しいて言えば少しだけキレが良くなったような・・・?

それよりも個人的な利点はねじ止め箇所の多さで,拡張しやすくなったことです.冷却ファンや近接センサのマウンタもこのネジを使って締結しています.
(ただし,M2.5ネジやM1.5ネジなどかなり特殊規格を使用しているので注意.)
ちなみに過去に導入(しようとして断念)したピエゾセンサも,このネジ止め部分を拡張していました.
shikky-lab.hatenablog.com

ただお値段的にあまりおいしくないので,おすすめ度は低いかな... ノズル交換を頻繁にやる人にはおすすめかも?

ノズル

テクダイヤ様が非常に高精度なノズルのテスターを募集する「ノズルチャレンジ」という企画を行っており,私もエントリさせていただいていました.

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テクダイヤノズル

0.4mmのノズルを頂いたのですが,真円度が非常に高く,フィラメントがスルスルとスムーズに出てきます.これにより生成物のラインが揃い,見た目の品質が全体的に向上した感じがします.
テクダイヤノズルの効果については,Twitterで"#100umノズルチャレンジ"や"#400umクオリティチャレンジ"で検索すると非常に多くの例が出てくるので,興味ある方は調べてみてください.
またノズルの先端が少しとがっており,ノズルの輻射熱がフィラメントに移るのを防いだり,印刷物にノズルが擦れて糸引きするといったことを防げている気がします.
FDMTestのブリッジやオーバーハングが格段に改善したのは,このノズルによる影響が大きいと思っています.
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ノズル交換時のブリッジ比較(他にも色々変えてしまってますが,多分ノズル効果が大きい)

↑のブリッジはどちらもレイヤ冷却ファン未搭載の際に行ったものですが,一応Afterの方はスコア的には満点になっています.多分テクダイヤ効果.

テクダイヤ様曰く,ノズルチャレンジがひと段落したら一般販売を視野に動いているらしいので,近いうちに購入できる日が来るのかなと思います.
その際は0.1mmノズルも試してみたいなと思います.

レイヤ冷却ファン

Flsun i3にはレイヤ冷却ファン(押し出し直後のフィラメントを冷やすやつ)が搭載されていないので,搭載しました.詳細は過去記事にて.
shikky-lab.hatenablog.com

上記エントリにも書いていますが,当然ながらブリッジに対してかなり効果がありました.
私はABSをメインに使用していますが,PLAだともっと顕著に効果が出るかと思います.

近接スイッチ & ビルドプレート

近接スイッチを交換したのはビルドプレートにUltrabaseというanycubic謹製のガラスプレートを導入したかったためなので,合わせて一項目にしました.
これも詳細は過去記事をご参照ください. shikky-lab.hatenablog.com
shikky-lab.hatenablog.com

それまでは3Mのプラットフォームシートを使用していて,正直定着に関してはそこそこ満足していたのですが,

  • 劣化するため定期的に交換が必要
  • 定着が強すぎて,剥がすのがめちゃくちゃ大変
  • ABSだと定着が強すぎて,シートのほうがはがれてしまうことがある

といったことに悩んでいました.Ultrabaseに交換したところ,高温時はしっかり張り付いて,温度が下がるとパキっと剥がれるので非常に良いです.
現在使用5か月程度ですが,今のところ特に劣化も感じていません.ABS相手に少し剥がれることもありましたが,その際は伝家の宝刀"しわなしPITs"を使えばばっちり張り付きます.
このプレートは水洗いもできるので,メンテナンスも楽です.
3Dプリントが一気にストレスフリーになったので,導入する価値は大きいと思います.

モータードライバ

A4988からTMC2208に交換しました.A4988は安価でポピュラーなステッピングモータドライバなのですが,モータ動作時の音がうるさい事で有名です.それに対してTMC2208にはStealChopという非常に動作音の小さい動作モードが搭載されています.
効果は圧巻で,私の環境ではモータ音は聞こえなくなりました.そのため摺動部が擦れる音やタイミングベルトが回る音が支配的になりましたね.あとファン音.
このモードはモータのトルクが大きく下がるらしいので,突き詰めたセッティングをしている場合は動かないかもしれませんが,基本的にはオススメできる一品だと思います.
なおMarlinでこのドライバを動かすためには色々と手を加える必要があります.そのあたりは先人様が分かりやすくまとめているので,いくつか紹介しておきます.
Anycubic i3 MEGA アップグレード計画② 静音化しよう!|Yan|note
I3MEGAのモータドライバーを変更する|はるかぜポポポ|note

その他

一応これ以外にも,ビルドプレートにコルクシートを貼ったり,フィラメントを密閉容器(ドライボックス)からフィードするようにしたり,全体を段ボール+アルミシートで囲ったりしています.
コルクシートはヒートベッド用ヒータのパワー不足を補うのにかなり貢献していて,全体の囲みはABSの生成安定に大きく寄与していますね.ドライボックスは別途フィラメントドライヤー(≒ドライフルーツメイカー)と合わせて導入しましたが,一定の効果はあると思います.これらは下記記事を参考に導入しました.

ANYCUBIC i3 MEGAをアップデート ヒートベッド断熱材|はるかぜポポポ|note
ABSを抑え込め![FDM 3Dプリント]|はるかぜポポポ|note
ダイソー「密封容器5.5L」で作るフィラメント送出機能付きドライボックス

おわりに

色々やってひと段落した気がしたのでまとめたのですが,思ったほど改造してなかったですね...
あとやってみたいところとしては,制御基板にRaspberry pi導入してOctoPrintを試してみるのと,ダイレクトエクストルーダ化でしょうか.
前者はいいとして,後者はフレームの剛性が足りない気がするので,やるならフレームごと交換する必要がある気がします.そうなったらもう買い替えた方がよさそうな.

さておき,ある程度満足いくところまで高められたので,3Dプリンタ改造は一旦ここまでにしたいと思います.
作りたいネタは最近色々溜まっているので,しばらくはそれらを着々と消化していきます.
それでは.