雑食エンジニアの気まぐれレシピ

日ごろ身に着けた技術や見知った知識などの備忘録的なまとめ.主にRaspberry Piやマイコンを使った電子工作について綴っていく予定.機械学習についても書けるといいな.

Anti-ooze nozzleを導入してみた話

※導入と題していますが,現時点ではパラメータ調整が足りず,綺麗な造形までは至っていません.

※つまり導入はまだ完了していませんが,ここまでの備忘録としてメモしました.

3Dプリンタを使っていて,地味に気になるのがノズルからの垂れ.
特に垂れが1層目を邪魔して剥がれてしまうケースは残念感も一入です.
(※後述しますが,これに関してはリトラクト設定で割と何とかなります.)
そんな中,ノズルの垂れを激減させることができるノズルがあるとの話を聞いたので,導入してみました.
コチラです.
glocal-additive.myshopify.com
今回はこれの導入時のことを書いていきたいと思います.
実はノズル交換自体が初めてなので,ノズル交換に伴う初歩的なトラブルシューティングが主になる気もします.

Anti-ooze nozzleについて

詳細は公式の方がかなり分かりやすいので省略しますが,簡単に言うとノズル先端に弁がついていて,リトラクトした際にその弁が締まってフィラメントの排出を抑制してくれます.
そもそも垂れはなぜ起こるのかというハナシですが,ホットエンドは下記のような構造になっています(E3Dv6の画像ですが,どのホットエンドも大体同じだと思います).

f:id:shikky_lab:20200827033824p:plain
ホットエンドの構造
この図において,Cold zoneはフィラメントが固体の状態,Melting zoneは液体の状態となります.その間にある転移状態となるTransisionが3Dプリンタにおいてかなり重要で,ここを如何にシャープに転移させられるかが大切とか色々あるらしいんですが,今回は要点ではないので割愛します.
で,垂れの話ですが,フィラメントを引き戻した際に引き戻されるのはTransition zoneより上の部分となるため,Melting zone内にフィラメントが残ってしまいます.そのフィラメントが行き場をなくしてノズル先端から出てくるのが垂れとなります(と思ってます).
そのため,垂れ量はMelting zoneの容積に比例することとなります.今回導入したAnti-ooze nozzleではこの容積=弁のサイズとなるため,垂を大きく減らすことができるわけですね.(ただし,弁が締まる余地分の容積だけ垂れは発生します.なので作者様も"no oozeではない"と仰っています.)

ノズル交換について

次にノズル交換の手順及び,その際に遭遇したトラブルについて書いていきます. 実は私はノズル交換に何度か失敗しまして,フィラメントを押し出す際の抵抗がかなり大きくなり,プリント中にノズル詰まりを起こしてしまいました.
その際に怠っていたポイントをまとめておきます.もしノズル交換時に同じようなことが起こった場合は,これらを満たしているか確認するとよいかもしれません.

私が使用しているプリンタはE3Dv6のホットエンドを使用しているのですが,次のような部品で構成されています.

f:id:shikky_lab:20200827035459j:plain
ノズル分解図
左がノズル,中央がヒートブロック,右がホットエンドスロートとか呼ばれる部分ですね.このスロートの縊れがTransition zoneで,右の長めのねじ部分にヒートシンクが取り付けられてCold zoneになります.

ポイント1 熱伝導グリスをちゃんと使う

スロートのねじ部分には,熱伝導グリスが必須です.先ほどTransition zoneが重要という旨をちらっと書きましたが,熱伝導グリスを使用するとその転移がシャープになります.たぶん.

ポイント2 ノズルをヒートブロックに取り付ける際に,完全に締め切らない

これはAnti-ooze nozzle様のサイトでも明言されていますが,樹脂の密閉はノズル-スロート間の締め付けで行います.ですので,ヒートブロックとノズルをしっかり締める必要はないんですね.というか,ここで締めてしまうと増し締めの際に締める余裕がなくなり,スロートとの接触が甘くなって樹脂漏れを起こしてしまいます.
E3DのAssemblyガイドにもありますが,ノズルは一通り締めたあと,少し緩めておくとよいです. https://wiki.e3d-online.com/E3D-v6_Assembly

ポイント3 増し締めは高温状態で行う

仮組みは常温状態で良いのですが,最終的な増し締めは高温状態でやる必要があります.常温状態で増し締めしても,温度変化による変形で隙間が出てきてしまうためです.なので,実際のプリント温度よりも高い,ハードウェアの上限あたりまで温度を上げて締めるのが良いと思われます.
なお,常温で増し締めした際は下記のように樹脂漏れを起こしてしまっていました.

f:id:shikky_lab:20200827041446j:plain
樹脂漏れを起こしたホットエンド

この辺りのポイントを守って組付けたところ,安定して稼働するようになりました.
※ちなみにAnti-ooze nozzle(通常版)のねじ長は6mm程度で,E3Dv6ノズルの標準(7.5mm程度?)より少し短めになっています.なので,スロートをヒートブロックに通常より深く突っ込む必要があります.
そのためTransition zoneの縊れが一部ヒートブロックに入ってしまったので,少し薄めのヒートブロックを探したほうが良いかもしれないです.

Anti-ooze nozzleのプリント設定

公式のガイドに書かれていますが,リトラクトの際に弁の容積分のずれが起こるため,Coastingやリトラクト後の余分な押し戻し設定が必要になります.

  • Coasting
    • リトラクト後に,垂れを利用して造形を行う仕組みです.公式ガイドによると0.7mm3あたりを推奨しています.
    • curaではExperimentalの設定の中にあります.
  • Retraction Extra Prime Amount
    • リトラクト後にフィラメントを戻す際に,多めに押し戻す設定です.公式ガイドによると2.8mm3あたりを推奨しています.
    • curaではTravelの設定の中にあります.

造形結果は?

ひとまず上記の設定あたりを色々と試して何度か造形を試みたのですが,現状は下記の感じになっています.

f:id:shikky_lab:20200827043759j:plain
左:通常ノズル.右:Anti-ooze nozzle

・・・・・・はい,なんというか,まぁ綺麗な造形とは言えないですね.
思ったよりもシビアな設定が必要なようです.このあたりはこれから調整を頑張ってみます.また改善したら記事にしたいと思います.

オマケ:通常ノズルでの垂れ対策

冒頭にて"1層目の垂れ対策については後述する"とか書いて忘れてました.これについてですが,Print開始時および終了時にGコードを追加してリトラクトを行っておくのが効果的です.
終了後に多めに(私は7mmで設定しています)フィラメントを巻き取っておき,造形開始直前にその分を戻すように設定しておきます.
あとはスカートなどを出すようにすれば印刷開始時の吐出が安定するので,綺麗に造形できると思います.
印刷開始時/終了時のGコードは,curaでは上部のSettingsメニューからPrinterを選ぶと設定することができます.

おわりに

というわけで,今回はノズル交換およびAnti-ooze nozzleについて書きました.
まだまだ要調整ということで導入が完了したとは言えない状況ですが,色々とパラメータ調整していきたいと思います. それでは.